ロシア編12


ハサミで切り取られた記事は真新しいスクラップブックに綺麗に貼り付けられてゆく。
記事に添えられた写真まで綺麗に切り取り貼り付ける様子は、持ち主の几帳面さゆえかファン心理ゆえなのかは微妙なところだ。
世界選手権メダリストの3人が肩を組み笑顔で映る1枚目の写真。そして金メダルにキスするヴィクトルお馴染みの姿が収められた2枚目の写真も綺麗に切り取られ貼り付けられる。

「できた!」

すべての作業を終え、彼は満足げに自身が制作したスクラップブック『ヴィクトル No.1』を読み返し始めるのだった。


『新生ヴィクトル・ニキフォロフ効果でチケット販売5倍に!!』



世界選手権5連覇の偉業を達成しリビングレジェンドとよばれるフィギュアスケート界の皇帝、ヴィクトル・ニキフォロフが3月27日に行われた初日の公式練習に臨みました。

リンクサイドに登場すると、早速会場を訪れたファンから黄色い歓声が沸き起こりました。ロシアのファン以外にも、現地のファンや世界各国からも多数が来場。
新生ヴィクトル・ニキフォロフ効果か、チケットの売り上げも空前のフィーバーに。チケットの販売数は前年の世界選手権の6,500席の5倍で、世界選手権における過去最多観客数をすでに超えているといいます。
ロシアからの団体観客は4,000人とのこと。その他各国から団体観客が訪れ、周辺のホテルも賑わいリビンクレジェンドの世界選手権6連覇への期待が高まっています。

現地メディアは、公式練習について「ヴィクトルを見るために200人のファンが観客席を埋めた」と報じ、「競技ではなく練習を見るために、これだけの観衆が集まるのは異例の事態」と驚きを伝えています。




『世界選手権のリンクに好感触!氷の状態もよかった、笑顔のリビングレジェンド』



世界選手権6連覇を狙うヴィクトル・ニキフォロフは会場の雰囲気を感じながら公式練習1日目を滑り終え「楽しかったよ。来シーズンの五輪を彷彿とさせるような青を基調としたリンクで気持ちも引き締まった。滑りやすい温度で、氷の状態もよかったね」と好感触。
さらに、「何よりこの大会で、いいコンディションの中、滑れることが幸せ。みんなを驚かせる滑りを約束するよ」と、万全の状態で大会を迎えられる喜びを口にするとともに新たな滑りへの自信を垣間見せた。

今シーズン休養を表明し、約9ヶ月間、選手としてリンクを離れていたヴィクトルだったが、溢れる笑顔は昨シーズンの世界選手権で我々にみせた憂い顔とは違い、その心境の変化にも注目が集まった。




『新生ヴィクトル、練習でジャンプ全て成功!ノーミス演技へ万全』



男子ショートプログラム(SP)を控えるヴィクトル・ニキフォロフは公式練習2日目、SPの曲をかけて滑り、ジャンプ全てをきれいに決めました。

午前中に行われたサブリンクでの練習では高難度の4回転フリップで回転不足など失敗続きでしたが、午後に行われたメインリンクでの練習では復調。4回転フリップ、4回転サルコー-3回転トーループ、トリプルアクセルを次々と成功させ、早くも観客の大歓声を浴びました。

観客席から公式練習を見守っていた大会関係者も「教科書みたいなクリーンで美しいジャンプ」と絶賛。指導するヤコフ・フェルツマンコーチも「本当によかった。何も問題はない」と太鼓判を押しました。

今シーズンはSP、FSともに過去のプログラムを使用しており旧作との違いも話題になっています。これに伴い、過去のスケーティングを納めた動画サイトへのアクセスも集中し、世界中の注目が彼に集まっていることが伺えます。




『リビングレジェンド圧巻の滑りで男子SP歴代最高得点を更新!』



男子SP。ヴィクトル・ニキフォロフがすべてのジャンプでGOE+3を叩き出し、GPFで同門のユーリ・プリセツキーに塗り替えられた男子SP歴代最高得点を更新し、首位発進を果たした。
スピンで一度パランスを崩すシーンもあったが、ステップでは圧巻の滑りを見せ役9ヶ月に及ぶブランクを感じさせない存在感を放ち明後日のFSへ好発進となった。

演技後「いい演技ができた。ヒヤリとした部分もあったけど」と笑いながらウィンクを飛ばすシーンもあり、首位発進でもリラックスした様子が伺えた。

またコーチとして指導している日本の勝生勇利も4回転フリップを成功させSP三位につけ好調な滑り出しを見せている。




『リビングレジェンド、世界選手権6連覇達成!』



序盤に4回転フリップ、4回転サルコーを立て続けに決め、さらに今季から競技に取り入れた4回転ループも成功。今季はいつもより4回転の数を減らした構成でのFSとなったがジャンプの質では文句のない仕上がりだった。
問題は演技後半に表れた。
「体力は万全ではない」
大会開始前のインタビューで唯一の懸念を語っていたヴィクトル・ニキフォロフだったが不安は的中。演技後半はスピードが落ち、加点が伸び悩む場面もあった。

総合では昨年の世界選手権の得点を10点近く下回る結果となったが、教え子と、同門の弟弟子に挟まれ自身6度目の世界選手権金メダルを手にし満面の笑みでの表彰台となった。

今大会、公式戦で4回転ループを成功させたことによりオリンピックを翌年に控え、ヴィクトル・ニキフォロフは男子フィギュア史上初の5種類の4回転をもつ選手となった。
世界選手権6連覇の波に乗り、オリンピック3連覇も最早夢ではない。